作品紹介

監督テア・シャーロック
原作ジョジョ・モイーズ
音楽クレイグ・アームストロング
脚本ジョジョ・モイーズ
制作カレン・ローゼンフェルト
アリソン・オーウェン
出演エミリア・クラーク/サム・クラフリン/チャールズ・ダンス/マシュー・ルイス

あらすじ

舞台はイギリスの田舎町。ルイーザ・クラーク(エミリア・クラーク)は、お洒落をすることが大好きな26歳。
ある日、働いていたカフェが閉店することになったルーが新たに得た職は、バイクの事故で車椅子生活を余儀なくされ、生きる希望を失ってしまった超ハンサムな大富豪ウィル・トレイナー(サム・クラフリン)のお世話係をする期間6ヶ月の仕事だった。
最初はルーに冷たく当たるウィルだったがルーの明るさが、ウィルの頑な心を溶かしていき、やがて2人は恋に落ちていく。
しかしある日ルーは知ってしまう。
ウィルが決めた「生きる時間」があとわずかだということを・・・。(公式サイトより

感想

この映画で初めて「サム・クラフリン」に出会って、私は恋に落ちました・・・。
イケメンなことは確かですし、元気な頃のウィルったらマジかっこいい・・・!
この映画で初めて知ったとはいえ、この時点ですでにキャリアを築いていたサム。
「パイレーツ・オブ・カビリアン」や「あと1センチの恋」、「ハンガー・ゲームシリーズ」など、主要人物を演じてきた実績の持ち主。

明るく天真爛漫で、個性が光るルイーザを演じるのは、「ゲームオブスローンズ」で「デナーリス・ターガリアン」を演じたエミリー・クラーク。ゲームオブスローンズとは打って変わって、素朴で愛らしいキャラクターがよかったです。

事故で身体が麻痺状態になってしまったウィルを献身的に介護するルイーザ。
最初はぎくしゃくしてる二人が次第に心を通わせ、恋に落ちるというのは、映画のストーリーとしてはよくあるパターン。
それでも観てしまうのは、ロマンス映画好きな性にほかならず。

引用元:公式サイトより


が、この映画の本当のテーマは「尊厳死」。
ウィルは、自分の身体の状態に耐えきれず、6ヶ月間で自分の人生に幕を閉じようと決意していたのです。
それを知ったルイーザは何とか、ウィルにとどまって欲しいと、あの手この手を考えて実行するのだけれど、たとえルイーザに恋をしても、ウィルの決心は変わらないのでした。

自殺ほう助は認められている?

この映画で、「自殺ほう助」が認められている国として出てくるのが、「スイス」。
スイスでも、医師など第三者が患者に直接薬物を投与するなどして死に至らせる「積極的安楽死」は法律で禁止されているのですが、認められているのは、医師から処方された致死薬を患者本人が体内に取り込んで死亡する「自殺ほう助」。
もちろん、他のほとんどの国は「自殺ほう助」も禁止されているわけで、それでも治る見込みのない病気や障害などを持っている人が、スイスでそれを選択肢の一つとして選ぶことになるということです。

これには賛否両論があり、どっちが正しいとかという答えはない気がしています。
そういう状態にならなければ決してわかり得ない。
そうなったとき、自分の命をどう扱うのか。自分の命だけど自分だけの命ではない。
どちらを選ぶにしても大変な勇気が必要なことは確かです。

どの立場で考えるか

ここで、「自分だったら」ということは必ず考えることになると思うんですよね。
ほとんど身体を自分で動かせず、誰かの力を借りなければならない。
自分で体温調節もできないのでいつどうなるかもわからない。
明るい未来なんて考えられないし、人に迷惑をかけるだけの役にたたない人間になってしまった気がして、絶望もするでしょう。

けれど、映画「最強のふたり」の例もあるのですよね。
完全麻痺の男性と介護者の最強の友情で共に生きていく。

ウィルは、ルーという、そのままの自分を愛してくれる人と出会えたのに、(彼女の足かせになるが嫌というのもあるかもしれないけれど)、最初の決心を変えることはなかった。それは一つの選択だし、「自分だったら」と考えると、やはりどっちと言えないものがある。

「ルーの立ち場だったら」
と考えるとやはり切ない。
ウィルの決心を変えられなかったことに憤りを感じるルー。
「どうしたらいいの?」と問うルーに父親が言う。
「愛することだ」と。

これほど辛いことはない。
愛する人には、たとえどんな姿でも生きていて欲しいと願ってしまう。
どんなに愛していても去っていこうとする人を支えて見守らなければならないって。。

それは両親も同じ。
大切な一人息子が、自ら自分たちより先に逝こうとするのを見守らなくてはならない。

誰もが究極の選択の中で、それぞれの立ち場で愛を貫こうとしている。

ハッピーエンドであって欲しい

この話は、ハッピーエンドなのだろうか。
公式サイトには
『恋におちた相手が、半年後に永遠の旅立ちを選ぼうとしている──そんな映画だと聞けば、なんて悲しい物語だと思うけれど、恋人たちがくれるのは、最高に幸せな気持ち。観終わった後、きっとあなたも多くの人にこの驚きと感激を伝えたくなる。』
とある。

確かに音楽会のデートや旅行先でのロマンスは胸キュンなのだけれど、ウィルにとっては、ルーの気持ちを察しての思い出作りだったんだろうか。

結局ルーは、最後は前向きに歩いていくのだけれど、「なーんかせつないんだよなー」と思ってしまうのは、センチメンタル過ぎる私の性分だからかもしれません。

ウィルはずっとルーの心のなかで生きていくのだろうし、ウィルが残してくれた財産でこれから広い世界にチャレンジしていくんだろうから、このストーリーは「ハッピーエンド」であって欲しい。

映画を楽しむポイント

映画はアメリカ・イギリスの合作ですが、出演者はほとんどイギリス人。
イギリス人の方は、気品がある人が多いですね。
共演には、「ハリー・ポッター」シリーズで「ネビル」役だったマシュー・ルイスや、「ゲーム・オブ・スローンズ」で、「タイウィン・ラニスター」役だったチャールズ・ダンスも。
「こんな役もするんだー。やっぱ役者だのぉー」などと観てみるのもよいかも。

ルーが住む街の建物や風景も素敵。ルーのファッションとマッチしたカラーの町並みや、伝統ある建物との混在。
そのルーのファッションもカラフルで可愛くて個性的。
自分だったらなかなかできないファッションも、映画の中では楽しめます。

ルーの家族もいい。大人数でわいわいがやがやだけど、家族が支え合いながらの日常も微笑ましい。

そして、映画の中の音楽。どれも場面にマッチしているからこそ、心に響きます。



エミリー・クラークは『ゲーム・オブ・スローンズ』シーズン2放送前、トレーニング中に体調が悪くなり病院に搬送され、くも膜下出血という診断を受け脳の緊急手術を行い、後遺症に苦しんだという壮絶な過去が。
それでも長いリハビリから復帰。ゲーム・オブ・スローンズの最終話まで出演してるし、その間に他の映画も撮ってるし、凄いですよね。これからの活躍にますます期待です。