
作品紹介
米海軍特殊部隊SEALSの指揮官であるジェームズ・リースは、シリアでの極秘任務"オーディンの剣"に待ち伏せ攻撃を受け部隊の仲間を全員失う。自身も爆発の影響で脳震盪になり、記憶が曖昧になってしまう。一緒に唯一生き残った隊員も自殺するが、その死に疑問を抱く。そんな中、頭痛や幻影など体調が悪くなったジェームズは病院に検査に行くが、何者かに襲われ、愛する妻と娘も殺されてしまう。
事の真相を究明していきながら、関わった人間をリストにし、復讐していく。(全8話 2022年)
| 原作 | ジャック・カー |
| 原案 | カールトン・キューズ/グラハム・ローランド |
| 製作総指揮 | クリス・プラット アントワーン・フークア |
| 出演 | クリス・プラット/コンスタンス・ウー/テイラー・キッチュ/ライリー・キーオ他 |
登場人物
ジェームズ・リース(クリス・プラット)
自分が参加指揮したシリアでの特殊作戦で多くの部下が殉職し、帰国後は作戦失敗の責任を問われるが、頭痛や記憶障害などに悩まされる。そんな時、唯一生き残った仲間が自殺し、自らも何者かに襲われる。そして妻子が殺された時、陰謀の真相究明と復讐に身を投じていく。
今回は、残酷とも言えるほど復讐に徹したジェームズ・リースを演じたクリス・プラット。
ホームレスも経験しながらチャンスに恵まれ、「ガーディアンズ」シリーズで一躍スターに。「ギャラクシー」シリーズ・「ジュラシック・ワールド」シリーズなどに出演。
ベン・エドワーズ(テイラー・キッシュ)
リースの親友で、かつてリースと共にシールズにいたが、除隊になり現在はCIAに。その過程は「ターミナル・リスト」の前日譚「ターミナル・リスト闇の狼」で明かされている。
ケイティ・ブラニク(コンスタンス・ウー)
記者。最初は兵士の過度な負担について調べていたが、リースと知り合い、リースとともに陰謀の真相を調べていく。
トニー・レイウン(J.T.パルド)
サンディエゴ勤務のFBI捜査官。真相を知るにつれ、リースに同情するが、なんとか復讐を止めようとする。
リースのターミナル・リストの人物
ロレイン・ハートリー(ジーン・トリプルホーン)
国防長官。薬物実験の許可を出し、リースに命を狙われる。
ジョッシュ・ホルダー(ウォーレン・コール)
NCISの捜査官。作戦で生き残った仲間も自殺に見せかけて殺し、体調不良で検査に行ったリースも病院で襲うが、リースに同じように自殺に見せかけて殺される。
サウル・アグノン(ショーン・ガン)
キャップストーン・インダストリー社の重役。リースや家族の殺害を依頼する。
スティーブに依頼され殺し屋を雇い、リースの家族を殺させる。
リースによって薬物中毒に見せかけ殺される。
スティーブ・ホーン(ジェイ・コートニー)
キャップストーン・インダストリー社のCEO。軍と通じて薬物実験を行い、隠蔽を図るためにリースや家族を殺す依頼をする。リースの家族を殺すよう依頼された殺し屋ナバハスもリースの復讐で殺される。
軍関係者
ジェラルド・ピラー:アメリカ海軍特殊戦コマンド指揮官
レナード・ハワード:アメリカ海軍大佐。海軍法務部
ビル・コックス:アメリカ海軍中佐。ネイビー・シールズ指揮官
3人が結託し、兵士に薬物実験を行い、隠蔽のために「オーディンの剣」作戦を故意に失敗させたことを知ったリースに殺される。
感想(ネタバレあり)
元米海軍特殊部隊(Navy SEAL)のジャック・カーによる同名小説『ターミナル・リスト』が原作。原作者のジャック・カー自身も脚本・製作総指揮を務めています。
自分的には「正義の味方」的なイメージの強いクリス・プラットが、今回はこれでもかと言うほど「復讐の鬼」に徹した役で、「善」か「悪」かだけでは語れない複雑な心境になりました。
これまでも何かの陰謀に巻き込まれ、妻子を殺され復讐する、というアクション映画はいくつもあるのですが、それをクリス・プラットがするというのは意外でした。しかもそれが元SEALだった人の原作なわけで、架空の話ではあるのだろうけど、警察に山中で追い詰められていく場面とかはリアルでした。
怪我してその傷口を熱したナイフで塞ぐとか、地中に潜って敵を欺くとか、ありとあらゆる戦術をこなすSEALの一端が垣間見れます。
いくつもの謎が一つの結末へ
結局、何故シリアでの「オーディンの剣」作戦が失敗し部隊が全滅したのか、何故、唯一生き残ったブーザーが自殺に見せかけて殺され、自分も命を狙われているのか、そして、なぜ妻子が殺さればければならなかったのか、という疑問。これがすべて一つのことに繋がっていたわけです。
ブーマーの自殺に端を発し、それはそもそも「オーディンの剣」作戦の失敗に繋がっていて。(その失敗も意図されたものだった)
ピラー、ハワード、コックスの3人によってSEALのメンバーに極秘に薬物を投与。それは兵士のPTSDを抑制する新薬の実験で、その副作用でみんなが脳腫瘍になってしまったことを隠蔽しようとして、「オーディンの剣」作戦の失敗を図り、当事者全員を闇に葬ろうとする。そのためブーマーも殺された。生き残ったリースは、実は脳腫瘍のために記憶障害や幻覚を見るようになっていたのだけれど、作戦の失敗でPTSDになったリースが家族を殺して自分も自殺する、というシナリオにするために命を狙われていた。
そもそも、その実験を許可したのが国防長官のロレイン・ハートリー。
その実験を軍の3人とキャップストーン・インダストリー社のCEOのスティーブ・ホーンが結託し、隠蔽しようとした、ということのよう。
ただ、わかってないのは、そもそも「オーディンの剣」作戦の情報源は誰だったかということ。
リースは少しずつ真相に近づきつつ、関わった人物を次々に殺していく。
ここがポイント
SEALSになるには58週間の過酷な訓練が待っています。
8週間の予備訓練、3週間のオリエンテーション、7週間の訓練を3セット、26週間の認定訓練。これだけ聞いても一般人の自分には、どんな過酷さか想像を超えます。そして、それを終えられるのは5人に1人。各部隊から優秀な人材が集まった中で更に振り落とされるわけです。リースはその中でも少佐という地位にあり、特に優秀だったわけですから、記憶障害やら幻覚に悩まされながらも、「何かおかしい」と気づくのです。
夢と現実の世界を行き来しながら復讐に徹したリース
脳腫瘍に侵され、妻や娘の幻を見ながら家族を殺した真相に迫っていくリース。
復讐とはいえ、殺し方が結構残酷で、これがシルベスター・スタローンとかだったら納得なのだけど、クリス・プラットだと残酷に思えてしまう。けれど、かえってだからこそいいのかもしれないし。
それだけ家族を殺された復讐心というのは想像を絶するものなのかもしれない。
リースの仲間たち
いくら強い復讐心に燃えているとはいえ、脳腫瘍で強い頭痛や記憶障害、幻覚などに悩まされているリースは、かつての仲間たちに協力を求める。元同僚で今はCIA局員のベン、かつての部下だったリズ、リースの父親からの友人でメキシコに住むマルコに拠点や武器、情報、飛行機など必要なものを調達してもらいます。
海軍とか、特殊部隊とか、映画やドラマによくありますが、やはり仲間を信じる絆の強さを感じます。
その中でもベンはリースのかつての特殊部隊の同僚で親友。絶対的な信頼を寄せている相手なのです。
そして真相へ
事件の真相を暴きつつ、次々と復讐をしていくリース。そして、副作用があることを知りながら兵士の薬物実験を承認したハートリー。ハートリーはケイティを連れてオーカス島の屋敷に閉じこもってリースを待つが、リースたちに突破され、自殺する。
でも、最後までわからなかったのは、「オーディンの剣作戦」を画策した人物。
3週間後、海に浮かぶベンのヨットにリースの姿があった。
結局、それはベンだった。リースや仲間たちが脳腫瘍に侵されてもう助からないことを知り、それで病院のベッドで死なせたくなかったと。リースの妻や娘のことは自分は関わっていないが、それを知ったとき、リースを手伝うことにしたと。
けれど、なんか、ワタシ的には、それは動機が弱い気がした。あれほど仲間の絆が強いのに、それだけでそんなことするだろうか?
気持ちはわかるけれど、その事実も告げず、どうせ死ぬならと、勝手に自分で仲間たちの命の行く先を決めることが正しいと思えたのだろうか?絆が強ければこそなのか?
ベンはお金は使わなかったけれど結局は受け取って仕事して、ただ途中でリース側に方向転換したというだけ。
悪か善かというと、黒に近いグレーで、結局は白でも黒でもない。どうせなら徹底した悪にしてほしかった。
最後にリースがベンを撃ったところは見せなかったので、もしかして助けたのか?とか後を引いてしまう。なんなら、助かっていてほしいとか思ってしまう。
けれどベンの名前を消して、そのリストを海に流したし、ベンが地図に記していた場所にヨットで向かったから、きっと殺したんだよね、と思う。ベンの役柄がなんだか中途半端で、憎みきれないのが、ワタシ的には悶々としてしまう。
でも、考えてみたらそれは人間としてのリアルな感情なのかもしれない。
近いうちに死んでしまう仲間たち。ベンが言ったように、仲間たちを現場で死なせたい、という思いはあったかもしれない。それでお金ももらえたら一石二鳥的な。でも結局それは隠蔽に加担したことになるし、ベンもそれは承知していたはず。
リースはやはり許せなかったのだろうと。
まとめ
なんだかんだで見応えのあるドラマになっていました。
謎が謎を呼んでいたし、最初はリースの妄想なのか陰謀なのか、どこからどこまでが夢か現実か、みたいなところでハラハラしたし、リースの山中での逃亡劇は、特殊部隊のすごさの一端を垣間見れました。
軍や企業や政治など複雑に絡み合って登場人物は多いし、ワタシなどは、2,3度確認しながら観てました。
シーズン2もあるようですので、楽しみに待ちたいと思います。
ちなみに・・・
そもそもの問題は「兵士のPTSDを抑制する」薬、というものでした。
PTSDとは・・・戦闘によるトラウマ体験が原因による心的外傷後ストレス障害。
戦場での過酷な体験、例えば死傷者との遭遇や戦闘行為、民間人の被害などを目にしたりすると、精神的に参ってしまうのは想像できます。これは戦争体験だけではなく、災害や事故でも生死に関わる体験をすると発症することがありますので、私たち個人でも発症する可能性はなくはないのです。
軍の退役後もPTSDの後遺症に苦しみ、精神に異常をきたしてしまう場合もあり、飲酒や薬物に依存してしまう場合もあります。そういう人たちの保障はわずかで、ホームレスになってしまう人もいて、社会問題になっています。
それを抑制する薬、というのはリアルですね。
ターミナル・リストをみるならこちら

