作品紹介
石油が枯渇した近未来。無限のエネルギーをもたらす新技術の開発に携わる1組の男女(トレントとハンナ)が、ある朝突然、覆面の集団に襲われる。謎のタイムループ現象の中で、ふたりは襲撃が起こる運命の1日を延々と繰り返す(2016年)
監督 | トニー・エリオット |
制作総指揮 | ジェームズ・ホッペ/イアン・ブリック他 |
脚本 | トニー・エリオット |
出演 | ロビー・アメル/レイチェル・テイラー/ショーン・ベンソングレイ・パウエル |
出演者
ロビー・アメル
「ARQ」の開発者トレントを演じるのは「マックス」や「CODE8」シリーズのロビー・アメル。
「マックス」は軍用犬との絆を描いた作品で、このときは主人公の死んだ兄の役でした。
その他、多くの映画やドラマに出演し、精力的に活動中。
今回は、死ぬたびに生き返るタイムループにはまり、何とか事態を収めようと奮闘しています。
レイチェル・テイラー
レイチェル・テイラーが演じるのはトレントと行動を共にするハンナ。
映画「トランス・フォーマー」や「シャッター」、ドラマ「CRISIS完全犯罪のシナリオ」、マーベルの「ジェシカ・ジョーンズ」などにも出演。「ARQ時の牢獄」では、実は反体制側の人間で、トレントを恨んでいる。
背景や状況に詳しい説明はない
この映画に設定されている時代のことや状況など、最初から説明はなく、次第になんとなくわかってくる、という感じになっています。
石油が枯渇し、世界は崩壊、マスクをしないと外にも出られない状況になっている近未来。
映画の中で「りんごが絶滅した」という台詞があるので、食糧難にも陥っている様子。
そんな世界を牛耳っている大企業(?)が「トーラス」で、それに対抗する勢力が「ブロック」というのが、話の流れでわかります。
「仮株券」というのが、物資と交換できるものらしく、とても貴重なもののようで、朝目覚めたときに、トレントとハンナは何者かによって拉致されますが、「仮株券」の隠し場所を聞くのが目的のようです。
隙を見て逃げ出しますが、その途中でトレントは階段から落ちて首の骨を折って死んでしまう。
そして、ここからタイムループが始まり、また目覚めるところから始まる。これを延々と繰り返すことになります。
映画を観ているものとしては、なぜ、石油が枯渇したのかとか、どうやって世界が崩壊してしまったのか、なぜ空気が汚染されたのかとか、やっぱり気になるところなのですが、その説明はなく、舞台はほとんど屋内で展開します。
その屋内には「ARQ」という永久機械があって、筒状の金属が高速で回り続けているのだけれど、それを開発したトレントがトーラスから盗んでここに運び、トーラスがそれを奪い返そうとしている、という設定のようです。
トレントとハンナにも過去があって、何かのときに、ハンナはトレントが自分を置いて逃げたと思っています。
それもあまり詳しい説明はありません。二人の会話で推測するしかない感じになっています。
詳しい説明がない分、映画を観ながら自分でいろんなことを憶測したりするので、よりスリリングな気がします。
拉致した何者かは、3人の男たちで、トレントはその男たちに殺されたりして何度も死ぬのですが、そのたびにまた始めからやりなおしていく。その過程で、段々と驚愕の事実が次々に明るみになっていくという流れになっていて、「なんだ、なんだ」と思いながらも、引き込まれていく。
ほとんど屋内でいろんなことが起こり、また登場人物も、トレントとハンナ、3人の男たちという、少人数。
ともすればつまらない展開にもなり得たと思うのですが、重要な部分をぼやかして、映画を観ている人たちにゆだねているところが、ある意味この映画の面白さなのかもしれません。
従来のタイムループとは違う展開
映画「ARQ時の牢獄」が意外なのは、タイムループに気づくのが自分だけではないところです。
タイムループの映画は今までも多くあります。「オール・ユー・ニード・イズ・キル」や「ハッピー・デスディ」、「ビフォア・アイ・ホール」などなど。
どれも、タイムループを繰り返しますが、それに気づいているのは自分だけ、という設定が多い中、この映画は段々と、タイムループに気づく人物が増えていく。
最初はハンナ。それから3人の男たちの一人、ソニー。段々と他の2人の男も気づいていく。
そこからは、タイムループの展開を知っている者同士の心理戦みたなものになっていくし、朝目覚めたときも、展開が段々と変わっていくので、終始緊張感が途切れない。
タイムループは「ARQ」が原因だとわかってはいるものの、「ARQ」を止めれば、もしかして死んだときに元に戻れなくなってしまうので、止めるに止めれない。
一箇所の屋内での展開、少ない登場人物、派手なことはそんなにないのだけれど、「これは最後はどうなるんだ」という興味をそそられつつ、観ることができます。
「時の牢獄」の意味
ちょっとネタバレになってしまうのですが、最後の方で、トレントとハンナが外に出る場面があります。
あたりは荒廃していて遠くに町があり、トーラスのものなのか、軍事用的な飛行機が飛んでいる。
そして、二人が居た家屋を取り囲むように丸く境界線が敷いてあって、その中だけタイムループしているのです。
これにはどういう意味があるのか。
なんだかんだ言って、結局はこれはトーラスの実験か何かなのか?
なら、「ARQ」を無理やり奪う必要はないし。
けれど、この境界線から出ない限りはタイムループからは逃れられない。
まさに「牢獄」。時間の中に閉じ込められて、死んでもリセットされて、永遠にその中で生き続ける。
映画のラストはまさにその象徴じゃないかと思います。
「なぜ」とか「どうして」とかはこの映画には必要なくて、たとえ「もやっ」としても、自分なりの憶測をしながら楽しめればよしとすればいいのかもしれないです。
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