作品紹介
映画プロデューサーのアルバート・ラディが歴史的傑作「ゴッドファーザー」を世に送り出すために奮闘する物語。パラマウント・ピクチャーズに入社したラディは、ベストセラー小説「ゴッドファーザー」の映画化を任される。しかしスタジオからの無茶振りや脚本にこだわる監督の間で難航、さらに映画製作を反対するマフィアから狙われるハメに。無事に映画は作られるのか?(2022年)
制作・総指揮 | マイルズ・テラー/デクスター・フレッチャー |
制作プロデューサー | ダリア・イベルハウプタイテ |
出演 | マイルズ・テラー/マシュー・グッド/ジョヴァンニ・リビシ/コリン・ハンクス |
※現在はAmazon Prime Video・Paramount+でも配信中
出演者
マイルズ・テラー
映画「深い谷の間に」でもご紹介したマイルズ・テラー。個人的には、この役が今のところ一番好きなキャラです。
マイルズ・テラーはパラマウント・ピクチャーズの新人ながら、ベストセラー小説「ゴッドファーザー」の映画化を任される実際のプロデューサー、アルバート・ラディを演じています。
アルバート・ラディは「ゴッドファーザー」「ミリオンダラーベイビー」のアカデミー作品賞を受賞し、「ロンゲストヤード」「キャノンボール」などを手掛けた名プロデューサー。
山あり谷ありの映画製作の難問を、あの手この手で乗り越えながら、映画「ゴッドファーザー」を完成させるその過程に驚かされます。
マシュー・グード
ヴァンパイアを演じた海外ドラマ「ディスカバリーオブウィッチズ」シリーズでファンになったマシュー・グードが演じるのは、ロバート・エヴァンス。当時のパラマウントの製作担当副社長。
「ローズマリーの赤ちゃん」「ある愛の詩」を大ヒットさせ、「チャイナタウン」や「コットンクラブ」など手掛けた伝説的なプロデューサー。その大物ぶりもうまく演じています。
ジュノー・テンプル
ラディの優秀な秘書で、後に独立してエージェントとして成功を収めるベティ・マッカートを演じています。
そんなに大きな役でもないけれど、小さい役とい言うわけでもなく、出ると何気に味のある役で多くの作品に出演しているので、名前は知らなくても顔は見たことある、って人も多いのでは。
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その他、パラマウントの親会社ガルフ&ウェスタンのオーナーチャールズ・ブルドーンや、エヴァンスと敵対するガルフ&ウェスタンの幹部バリー・ラピダス、また実在したマフィアも出てきたりして、波乱万丈な映画製作の現場を描いています。
感想
映画「The Offerジ・オファー/ゴッドファーザーに賭けた男」は、映画「ゴッドファーザー」が製作・公開されるまでの過程と、そこに行き着くまでに携わった実在の人々の困難や葛藤を描いて、実際の映画製作の現場というものを、ワタシたちに伝えてくれます。華やかな映画の世界の裏の現場では、予想も出来ない多くの難問が待ち構えているわけです。
脚本・監督・キャストの選出、そしてマフィア
イタリアン・マフィアを描いた小説「ゴッドファーザー」がベストセラーになり、パラマウントが映画化に乗り出す。
そこで、エヴァンスはラディに400万ドルという低予算で映画を作れと言う。
ラディは落ち目とされる監督フランシス・コッポラを雇うけれど、そのコッポラは、またもや落ち目とされるマーロン・ブランドや、当時まだ無名だったアル・パチーノを起用し、低予算で芸術性を追及しようとする姿勢に、親会社であるガルフ&ウェスタンの重役バリーは否定的で、何かしら妨害しようとする。
やっと製作の許可がおりても、コッポラと原作者であるマリオ・プーゾとの共同脚本がなかなか仕上がらなかったり、撮影現場では監督のこだわりで撮影が長引いたり、予想より予算が膨れ上がり、金策に走ったり。
ロケ地探しや、許可の申請、次々に起こる多くの問題。
順調に物事が進むなんて奇跡に近いのかもしれない。
しかし、この撮影で一番の苦労はなんといってもマフィアとの関係でしょう。
イタリア系マフィアのジョゼフ・コロンボは「イタリア系アメリカ人市民権連盟」を結成。ラディの車を銃撃したり、数々の脅しをかけて映画製作を妨害しようとする。
ドラマでも怖いけれど、実際にはもっと怖かったはず。どこまでが本当なのかはわからないけれど、もし本当にあったなら、マフィアに襲われたり脅されるって、命の危険のなにものでもない。けれど、多くのことを経て、お互いが理解を深めつつ、ラディはコロンボと不思議な友情のようなものを築いていく。
また、自身の恋愛やエヴァンスの結婚の破綻。特にエヴァンスはそれが原因でヘロヘロになっちゃって仕事も放ったらかしになってしまい、製作そのものが危機になってしまう。
現場のことだけでなく、プライベートも仕事に影響してしまうわけで、そこを乗り越えていく過程も面白い。
映画の製作現場の一端を見る
この映画では、「映画製作」という舞台裏の一端を「ゴッドファーザー」を通して観ることができる。
キャスティングを見ても、一人決めるだけでも、その映画と俳優の人生を決めることになりかねない。
この映画でも「落ち目」と言われたマーロン・ブランドを復活させ、無名のアル・パチーノを一気にスターに押し上げた。
映画のキャスティングは、一度決まっていた役でも途中で降板したり、交代したりして、主役でさえもなかなか決まらない場合もあるし、監督や製作会社など多くの思惑もあるので、なかなか難しいところかもしれない。
大スターが出演を断った映画が大ヒットした、なんてことはよくあるし。
ドラマとして「ゴッドファーザー」の制作現場を一つ見ても、無理難題を突きつけられたり、妨害されたり、こっちを立てればあっちが立たずで、観ているこっちも「どうなるんだ!」と思ってしまうのだけれど、それを一つ一つ解決していくプロデューサーや、いわゆる裏方の人たちは「凄い!」の一言に尽きる。
売れるものをつくれという幹部たちと、質の良い作品を作りたいという製作者側。
それは決して無理なことではないはずだけれど、映画というのは当たるも八卦、当たらぬも八卦、まさに「賭け」。
大物スターが出演すればヒットする、というわけでもないし、内容が良いだけでは売れなかったりする。
けれど、きっとこの「ゴッドファーザー」のように、どの映画も汗と涙とそれぞれの思いが交錯しながら作られているのかもしれない。
ちなみに、エヴァンスと敵対していたバリーも最後はいい人っぽくなってたし、ガルフ&ウェスタンのブルドーンもなんだかんだでいい味だしてて、ラディの秘書のベティーとのやりとりは微笑ましかった。
ベティが独立して自分の夢を叶え、成功した、というのも嬉しい。
また、「ゴッドファーザー」の名場面がどんな風に作られたのかも知ることが出来たりするのもいい。
この映画を観ていると、映画の作品は、俳優の人たちのほうが華やかに見えて、その実、その作品を表現する一つの手段で、やはり監督やプロデューサー、その他大勢の裏方の人たちのものなのかもしれないと思えてしまう。
もちろん、演じる人たちの力は大きいし、それも作品の欠かせない要素なのだけれど。
俳優たちが、製作者側になりたがるというのは、わかる気がする。
こういう仕事はしたことはないワタシなのですが、製作者側になってはじめて、その作品は自分のものになる、という感覚が生まれるんじゃないだろうかと思うのです。
映画のタイトル「The Offerジ・オファー」は、「ゴッドファーザー」の中のセリフで「断れないオファー」を意味します。それは、ラディが「ゴッドファーザー」を制作するにあたり、多くの「断れないオファー」に立ち向かっていく姿なのです。
いろんな苦難を乗り越えて、一本の映画を作り終えた時は、もう既に心は次の映画製作に向かっている。
ビジネスだから売れなきゃ困る。でも、製作する側の人は、作ることそのものが好きなんだと思う。
そしてまた「断れないオファー」に立ち向かっていくのです。