作品紹介
舞台はロサンゼルス。主人公のビリー・マクブライドはかつて巨大弁護士事務所を創設したエリート弁護士であったが、挫折し零落している。家族と別れ、酒におぼれてうらぶれたモーテル暮らしをしながら、しいたげられた人間や友人たちのために弁護士としてゴリアテ(原題:Goliath)のごとき巨大な敵と戦う。
監督 | 各エピソードごとに監督が違う |
制作・脚本 | デビッド・E・ケリー/ジョナサン・シャピロ |
出演 | ビリー・ボブ・ソーントン/ニーナ・アリアンダ/タニア・レイモンド/マリア・ベロ |
感想
ドラマの原題『Goliath(ゴリアテ)』は旧約聖書に登場する巨人兵士ゴリアテのこと。
自分より小さなものが大きなものを打ち負かすときの例えによく使われていて、このドラマも、見た目は頼りなげな弁護士が、巨大な悪に立ち向かっていく姿を描いています。
主人公のビリー・マクブライドを演じたのはビリー・ボブ・ソーントン。
下積み時代はかなり苦労して、栄養失調で入院することもあり。けれど、1992年、トム・エッパーソンと共に脚本も書いた『運命の引き金』で主演も務め、転機となったのは、1996年、監督・脚本・主演を務めたインデペンデント映画『スリング・ブレイド』がアカデミー脚色賞を受賞。今では、俳優・監督・脚本家・ミュージシャンと、多岐にわたり活躍中。
くたびれた感満載で、酒におぼれながらも、本来の正義感は失わず、悪に立ち向かっていくマクブライドを好演しています。
シーズンを通して描かれる「ゴリアテ」たちとの対決
かつては有名弁護士事務所で名を馳せたマクブライドも、ある訴訟で負けたのをきっかけに転落。
今ではお酒に溺れ、場末のモーテルに住みながら小さな訴訟をこなす毎日。
そんな中、大きな依頼が舞い込んで、巨大な陰謀を暴いていく物語が始まっていきます。
1シーズンごとに違う相手と法廷で戦う姿が描かれますが、いずれも巨大な権力を持つ大物揃い。
自分が悪なことをしているなんて露ほども思わない、自分の利益のためには多少の犠牲も厭わない、憎ったらしい人たちなのです。
全シーズンを通して敵対するのが、かつての仕事のパートナーであるクーパーマン。ウィリアム・ハートが演じています。
クーパーマンはマクブライドを心底憎んでいて、事ある事に妨害したり、時には命をも狙ったり。
シーズン1
「弁護士ビリー・マクブライド-Goliath-」のシーズン1では、そのクーパーマンの大口顧客である銃器を製造する「ボーンズ・テック」という大企業が相手。
ボーンズ・テックの社員の一人が、船の爆発で死亡する。「自殺」として扱われたその事件を、その妹が「何か裏があるのでは」と依頼。
訴訟を起こした瞬間から、マクブライドは数々の嫌がらせや脅しを受けます。
多くの障害や妨害を乗り越えながら、少しずつ暴かれていく悪事。何とか隠蔽しようとする大きな権力とどう戦っていくのかが見ものです。
シーズン2
「弁護士ビリー・マクブライド-Goliath-」のシーズン2では、事件がより複雑に。
マクブライドはロサンゼルスの市長候補であるマリソル・シルバと恋仲になり、彼女は娘のデニスの憧れの女性でもあり。
けれど、16歳の少年が容疑者になった殺人事件の弁護を引き受けたことで、有力な不動産業者の存在、麻薬カルテルなど、巨大な陰謀に巻き込まれていきます。
ここに出てくる、マリソルの義兄(?)が、これまた残酷な人で、体を切断するのが趣味という。
なんだか猟奇的な展開もあり、イッキ見できるシーズンになっております。
シーズン3
「弁護士ビリー・マクブライド-Goliath-」のシーズン3は、マクブライドの旧友が、土地の大規模な地盤沈下で亡くなってしまい、セントラル・バレーに舞台を移し、その原因となった土地を牛耳るブラックウッド兄妹に立ち向かっていきます。
大農場や、カジノ、水道など、多くの要素が重なり、徐々に真相が暴かれていくのが面白い。
マクブライドが薬を盛られ、どれが夢か現実かわからない中で、シーズン2の登場人物も出てきたりして、なんだかこんがらがるのだけれど、最後にはちゃんと着地しているところが、うまいなと。
シーズン3の最後は、マクブライドがブラックウッドの妹に銃で撃たれてクリフハンガーになってます。
シーズン4
「弁護士ビリー・マクブライド-Goliath-」の最終シーズンは、パティが大きな弁護士事務所に入り、そこにマクブライドも入ることになる。
シーズン3で銃で撃たれたマクブライドは、一命は取り留めるが、時々、西部劇の舞台や、今は亡き父、そして娘デニスの幻を見るようになりながら、巨大な製薬会社の陰謀に立ち向かっていく。
「弁護士ビリー・マクブライド-Goliath-」の魅力
各シーズンの「ゴリアテ」になるのは、シーズン1ではウィリアム・ハート、シーズン3ではデニス・クエイドとエイミー・ブレイナンなど、有名俳優。それも、ストーリーに厚みを加えているのは確か。
シーズン4の悪徳製薬会社の社長の一人にJ・K・シモンズ。
3人の悪徳製薬会社の社長によるミュージカルの場面は、これがまた秀逸というか。歌声とかダンスとか流石だなと。
だからこそ、その悪徳ぶりが強力に表現されています。
各シーズンを通して、マクブライドは、巨大なゴリアテたちの陰謀や策略に挫折しそうになるし、命を狙われたり、裏切られたりするのだけれど、そこには深い人間関係が描かれていて、観ている側もショックだったり、共感したり、マクブライドの助手になったような気持ちで、そのストーリーの中に入り込める。
緊迫感のある法廷シーンや、度々出てくるマクブライドの過去との向き合い方。
助手のパティを独特の持ち味で演じるニーナ・アリアンダ。
やっと心を開ける相手に出会えたのに、別れることになってしまう展開は胸が痛みました。
シーズンを通して敵対していたクーパーマンも、病気で余命幾ばくもない感じになり、最後にはマクブライドを助けたりします。
2022年に前立腺ガンの合併症で亡くなる前のウィリアム・ハートが演じていて、演技だろうけれど、その姿はリアルでした。
最後に、幻の中でマクブライドとクーパーマンが手を握り合うシーンにはジーンと来ました。
物語は比較的ゆっくりと進むので、スピード感を重視する方には物足りなさもあるかもですが、リーガルドラマとして、また成功と挫折を味わった一人の男の人間ドラマとしても、見ごたえのあるドラマになってるように思います。
一見、頼りなげで独りよがりっぽいマクブライドですが、チームの仲間や娘を愛し、不器用ながらも熱い正義感で、ゴリアテたちに鉄槌を下す骨太ドラマです。