作品紹介
カール・マークは、未解決事件捜査班の特捜部Qに降格・配属された。というのは、応援を待たずに彼が強引に捜索に入り込んだ被害者宅で銃撃を受け、マークは重傷、同僚二人のうち一人は殉職、もう一人は再起不能の重傷を負うという失態を演じたからである。そんな中、マークは未解決事件の捜査資料を整理する中で、自殺とされている資料に興味を持つ(全9話 2025年)
監督 | スコット・フランク |
脚本 | スコット・フランク |
製作 | スコット・フランク |
出演 | マシュー・グード/クロエ・ピリー/ジェイミー・シーベス/マーク・ボナー/ケイト・ディッキー |
登場人物
カール・マーク(マシュー・グード)
応援を待たずに入った被害者宅で犯人に銃撃され、若い警官が死に、相棒は半身不随となり、トラウマを抱えることになったカール・マーク。性格に難あり。セラピーに通い、離婚した妻の連れ子との問題を抱えながらも、新しい部署で未解決事件を扱うことになる。
一癖二癖ある個性的なカールを演じているのはマシュー・グード。個人的に好きな俳優さんです。ドラマでは「ダウントン・アビー」「ディスカバリー・オブ・ウィッチ」「ジ・オファー / ゴッドファーザーに賭けた男」などに出演。映画では「イノセント・ガーデン」で注目され「ゴヤの名画と優しい泥棒」「キングスマン:ファースト・エージェント」「アビゲイル」など多数。
アクラム・サリム(アレクセイ・メンヴェロフ)
シリア出身の謎多き男。警官ではないが、何とかカールの部署に入り、助手になる。紛争地帯出身のせいか、危険な相手の対処の仕方をわかっていて、腕も立つ。
最初は役に立つかわからずマークに冷たくあしらわれていたが、段々とその実力を発揮し、カールの信頼を得るが、まだまだ謎は多い。そんなアクラムを演じたアレクセイ・メンヴェロフは、ドラマ「ジャック・ライアン」映画「コンラクター」に出演しています。
モエラ(ケイト・ディッキー)
カールの上司。カールを厄介払いのために特捜部Qに移動させる。嫌な人かなと思ったけれど、実はマークの能力は認めている。
どこかで見たと思ったら、「ゲーム・オブ・スローン」でライサ・アリンを演じたケイト・ディッキーでした。ドラマ「ジャッカルの日」では、犯罪者の妻役でした。映画でも「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」や「ノースマン」など出演多数。
英国アカデミー・スコットランド賞主演女優賞や英国インディペンデント映画賞主演女優賞など受賞。
ジェームズ・ハーディー(ジェイミー・サイブス)
カールのパートナー。カールと共に被害者宅で銃撃にあい、半身不随となるが、リハビリにより、松葉杖で移動できるまでに回復。今回の事件でも分析力を発揮し、事件のカギを見つけ出す。
ローズ(リア・バーン)
車で事件の追跡中に、誤って老人を轢いてしまい、トラウマになる。ずっと事務仕事をしていたが、カールの部署に入れてほしいと頼む。トラウマにより自信を失っているが、段々と本領を発揮していく。
メリット・リンガード(クロエ・ピリー)
検察官だったが、大きな事件で失敗し、4年前に忽然と姿を消してしまう。自殺として処理されるが、カールのチームにより、再捜査される。
感想
原作はユッシ・エーズラ・オールスンの小説。最初はデンマーク版で、2014年から2019年にかけて映画「特捜部Q/ 檻の中の女」「特捜部Q/キジ殺し」「特捜部Q/Pからのメッセージ」「特捜部Q カルテ番号64」「特捜部Q 知りすぎたマルコ」があり、今回はデンマーク版の「特捜部Q/ 檻の中の女」にあたります。
ワタシはデンマーク版から観てて、本格的なクライム・サスペンスで、見ごたえがありました。デンマーク版ではアクラムは「アサド」になってました。
どうしても比べてしまうのですが、デンマーク版のほうが、やはり独特な雰囲気があり、カールももっとダークでした。「そこまで?!」って言うほど差し伸べられた手を拒否する人なんですょ。でもカールも周りの人達も、それぞれが役にピッタリでそれでもカールについていこうとする周りの人達が健気で好きでした。今回は、カールの上司も女性だし、ドラマだし、まぁ、比べるよりは別物として分けて観たほうがいいかもですね。
いくつかの事件が絡み合って一つに
このドラマは、まだ観ていない方は、ぜひ、結末をしらないまま観てほしいです。ドラマは、カールの銃撃事件と、別件で権力者の妻の殺人事件、更にはカールの特捜部での検事のメリットの失踪事件と、いくつか重なっていて、展開に飽きが来ない。一気見できる作品になっています。
メリットの事件も、最初はよくわからないのですが、段々と、メリットが誘拐され、減圧室に閉じ込められていることがわかるようになっています。その減圧室でメリットが今までの行いを思い出すことで、事件の真相がわかっていくのですが、それと同時に、カールの捜査もあの手この手で進んでいって、それが交互になっているので、わかりやすい。
メリットの過去に事件の糸口があり、その他にもいくつかの事件が絡み合っていて、意外な事実が次々とわかってくるし、登場人物が多く、怪しい人たちもあちこちにいるので、それなりの緊張感もあります。
ここがポイント
減圧室とは、潜水作業などで高気圧環境下で作業した後に、減圧症(潜水病)の治療や予防に使用される気密室です。高圧環境下で血液や組織に溶け込んだ窒素が、減圧時に気泡となってしまうのを防ぎます。
今回のドラマで出てくる「減圧室」。潜水作業などで深く潜ると気圧が上がります。潜水時には、水圧が深さによって上昇し、一般的に、10メートル潜るごとに約1気圧ずつ圧力が上昇。水面は1気圧ですが、10メートル潜ると2気圧、20メートル潜ると3気圧となり、深くなればなるほど圧力が大きく増加していきます。
急激な減圧は命にも関わるので、地上に戻る前に減圧室で体を慣らしていくんですね。そのための減圧室が、今回は拷問に使われます。
よく釣りで、深海の魚を釣ると魚の目が飛び出てたりします。それは深海の圧力の高いところから急激に地上に出るためで、人間にも同じことが起こります。メリットは減圧室で少しづつ圧力を高くされ、高圧力の中に閉じ込められています。頑丈でとても逃げることは出来ないのですが、たとえ逃げても急激な減圧で死に至ることになるので、まさに究極の拷問と言えます。ドラマの中で、誰が、どうしてそれを使ったのかも明らかになっていきます。
そんな、まだ誰も知らない減圧室に閉じ込められているメリット。生きているのか死んでいるのかさえわからない状況の中、それを導きだす過程の、カールやアクラム、ローズの会話のスピード感、相棒のハーディーとの掛け合いなども、キツさや皮肉もたっぷりだけれど、チームの人達はそれをわかっていて受け入れ合っていて、バラバラのようだったチームが、最後には何だかまとまっているところが何とも言えずいいです。
家族の物語も
カールは離婚した妻の連れ子のジャスパーとマーティンという友だち(?)と同居している。マーティンとはなんでも言い合える感じだけれど、どういう経緯で同居しているのかはわからない。
ジャスパーとは最初敵対している感じだったけれど、段々と打ち解けていく。
また、銃撃の後のセラピーで、最初はぶつかりながらも何となく心を通わせていくセラピストのレイチェルの存在も大きい。
ドラマの一番最後にカールの家で、ジャスパーとマーティン、レイチェルとテーブルを囲んでいるシーンはほのぼのしました。
◆配信開始
— Netflix Japan | ネットフリックス (@NetflixJP) May 29, 2025
Netflixシリーズ『特別捜査部Q』(イギリス)
強引で無骨だが凄腕の刑事が、寄せ集めの捜査班を率いて未解決事件に挑む。
『クイーンズ・ギャンビット』の監督・脚本家が手がける、エディンバラを舞台にしたドラマシリーズ。#特別捜査部Q pic.twitter.com/eTwqxvzBmh
見ごたえのあるクライム・サスペンス
元は北欧ミステリーということで、映画版はその雰囲気も独特。5シリーズがそれぞれ複雑でサイコサスペンス的な部分もありながら、各登場人物の苦悩も描かれていて秀逸でした。今回はそれをドラマ化した作品。
雰囲気や設定も違いはありますが、メリットとカールのシーンを交互にうつしたり、メリットが最後に死にそうなときに、過去に関わり合った人たちが次々と現れる表現は心に響きました。
マシュー・グードは、気品のある英国紳士が似合うのですが、今回はちょっと崩れた感で、それもいい。メインの事件も複雑で見ごたえがあるし、チームの皆や、家の同居人、義理の息子、セラピストなど、それぞれがいい感じに絡まってこれからも楽しみです。
今回はネタバレ無しの感想でしたが、やっぱり、これは前説なしで観てほしい。
デンマークの映画版では5シリーズでしたが、マシュー・グード版もそこまでやってほしい。もしシリーズ化になったら、間違いなく、マシュー・グードの代表作の一つになりますよね。
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